何年か前に身内から、
「あんまり着けないからよかったらあげる」
ともらったイヤリング。
全体は小ぶりだが、シンプルだかゴージャスだか形容しかねるデザインで、
私だって着けるかどうか分からないなーと思いつつ
くれるならもらっとこうかな、と見ていたら、
有名ブランドの名が刻まれていた。
持ち主も気付いておらず、それを知ったら気が変わるかなあと思いながら告げたら、
でも着けないからあげる と言うので、もらった。
着けてみると、想像してたよりなかなかいい。
形容しがたいデザインは服を選ばず、
他では見たことのない金具は、耳裏を挟む部分に白いゴムパッドが付いていて、
クッション性に優れて痛くないから長時間着けられて、しかも耳から落ちにくい。
さすが有名ブランドの品だわ。
と気に入って、よく着けていたのだが、
片方のゴムパッドの端が、ある時からだんだん溶けて歪んで崩れ出した。
その状態で着けると、耳にゴムがペタッと張り付き
はずす際に耳にゴムのカケラが残るし、本体のパッドがどんどん崩れてしまう。
ゴムパッドさえどうにかできればいいのだが、
案が浮かばず、着けるのをやめていた。
夏の初めのある日、暑いから涼みがてら通り抜けようと、駅前の百貨店に入った。
数えるほどしか通ったことのない入口から入ったら
もらったイヤリングのブランドのテナントがあるじゃん。
このブランドがここにいたとは知らなんだ。
というか、普段縁がないから目に入ってなかったんだろう。
どうせ通りすがりだし、いい機会だから、
ダメ元でイヤリングの修理のことを聞いてみよう。
「はい、こちらでご購入のお品でなくても、修理を承れます。ただ状態にもよりますので、一度お持ちいただいてから、お受けできるかどうかの判断になりますが、よろしいでしょうか?お持ちいただくのはいつでもよろしいですよ。」
うおお ありがてえ!お持ちしますともー!
と、それから3か月近く過ぎ、
やっと持って行くことができた。
店員さんに現物を見せてブランド名の刻印と不具合の状態を確かめてもらい、
「パッドの交換でよさそうですね」と言うので
てっきりそのまま預かりで工房などに送るのかと思ってたら、
「シリコンパッドに交換しますので、少々お待ちください。現在のものと部品が違うので、もしかしたらうまく合わないかもしれませんが、ご了承いただけますか?」
どういうことかと思いながら了承すると店員さん、
パーツケースを取り出してその場で修理を始めた。
えっ、長いまつ毛をくるんとカールさせたきれいな売り子の店員さんが、修理もしちゃうの?
思わぬ展開の10分ほど後、
差し出されたのは透明なシリコンパッドに付け替えられて復活したイヤリング。
「見たことのないデザインですが、全体の状態が大変きれいにお使いいただいてますね。前のパッドも初めて見ました。溶けた部分が残らないように拭き取りましたので。」
つまり、溶けたゴムをきれいに拭き取るのは手強かったんだろうな。
「部品が白から透明になってしまったのですが、よろしいでしょうか?」
よろしいに決まってます。そこの色に何の思い入れもございません。
そしてこれまでの店員さんの話から、相当昔のイヤリングなんだとも分かった。そうだったんだ。
また使えるようにしてもらえて嬉しいなあ。
さて、修理代はおいくらで?
「いいえ、お代はいただきません。こちら商品ご購入のアフターサービスですので。また不具合がございましたらお持ちください。」
ええっ?どこの店舗で何十年前に買われたか分からなくても、自社製品なら無償で修理するの?
何て太っ腹なブランドでしょう!
というか有名ブランドってみんなそういうもの?
これまでまったく縁がないから知らんのだけど。
二重にありがたあ!
ブランド品の信頼性は、こういうところにもあるのかもしれない。
売って終わりではなく、愛用してもらえるように。
ある意味利益の還流で、ファンを作り、さらなる利益が生まれるように。
この双方良しは、まず会社側の働きかけから成る。
それを忘れない会社が、きっと生き残っていくんだろうな。
だからって、私が今後製品の購入をブランド品中心にするかというと、
それはまた別の話。
だって先立つものがさあ・・・。