空を見てるのが好きだ。
快晴もいいけど、雲があると見飽きない。
昔、『空の名前』という説明付き写真集を買った。
いろんな雲の形の写真と、それができる気象条件が書かれていたように思う。
思う、というのは、その本が現在わけあってダンボールの中にあり、読めないからだ。
少し後に出た『宙(そら)の名前』も買ったな。
こちらは夜空に見えるものの写真と説明。
それとは別に高校生の頃、
部活で毎日天気図を書いていた。
NHKラジオ第2放送から流れる『気象通報』を聞いて、
ラジオ放送用天気図に書き込むのだ。
ラジオ放送用天気図は、いわば白地図のお天気版。
範囲は日本の周り、南はフィリピンの頭まであったかな、北はロシアのアリューシャン列島付近まで、西は大陸で東は太平洋。
全体に緯度と経度の線格子。
観測地点各所には白い丸があり、そこにお天気情報を書き入れる。例えば、
「石垣島 天気晴れ 南南西の風 風力3 気圧1020ミリバール 気温28℃」(例なので適当)
という具合で読み上げられるのを、天気図記号で書いて仕上げる。
観測の読み上げは石垣島から始まり、最初だけ項目を言うけど、次からはいちいち天気とか気圧とか気温とか言わない。
あと気圧の単位も今は異なり、ミリバールからヘクトパスカルへ。でも数値は変わらないんだよね。
気象通報は1日3回の20分番組で、
部活では16時からの放送を、毎回録音もして聞いていた。
観測地の天気を書き込むのは、早くに慣れる。
たまに「ひょう」なんて言われると、記号が分からず一瞬止まるが。
しかし、そこは大したことない。
問題は、最後の等圧線だ。
日によって気圧の数値は違うが、例えば1016ミリバール(ヘクトパスカル)の等圧線が通る地点を、
「北緯◯度・東経□度、北緯✕度・東経△度、・・・」と、10か所ほど読み上げる。
これが追い付かない。
しかも読み上げられる地点の順番に等圧線を引かなければならないので、
●とかでずっと印をつけちゃうと、順番が分からなくなる落とし穴が待っている。
落とし穴を回避するには、読み上げ順にその地点に
1、2、3、・・・と番号を振るといいのだが、
耳で北緯と東経の数字を聞いて探していると、次に自分が振る番号が何番か分からなくなる第2の落とし穴が。
ダブったりすると最悪。
で、それを聞き逃した場合のために、放送を録音するのである。
書けた人は確認できるし、
書けなかった人は慌てずに記入できる。
放送で読み上げられた等圧線を基準に、各地の気圧や風向き、高気圧や低気圧を考えて、4ミリバール(ヘクトパスカル)おきに全体の等圧線を引く。
全員書けたら、突き合わせてお互いに見てみる。
間違ってたら直したりして、それから翌日の天気を皆で予想して、
天気図の時間は終了。
気象通報は、船舶の関係者も聞いているから、
海の情報も流れる。海上の風速とか。
その中で、放送の最後の最後、ただ一度だけあった情報が、
「アリューシャン海域でソ連軍による危険な訓練が行われるため、漁業関係者は・・・」
"危険な訓練"の語句で部員一同一斉にどよめき、アナウンスの終わりの方なんて最早聞いちゃいない。
天気図そっちのけで、危険な訓練の内容に妄想をたくましくし、熱を帯びて語り合う。
落ち着いてーとの部長の呼びかけが虚しく響く。
まだソ連崩壊前、冷戦の只中のこと。
後にも先にも、あんなに盛り上がった天気図作成の時間はなかった。それも天気図関係ないし。
さて、天気図を書いていたのなら、
気象のことも学んで多少の予報もできるだろう、
と思われがちなのだが、
私は天気図を美しく仕上げることに注力するばかりだったので、
書けても予報はからっきし。
完全に持ち腐れた技術だ。ドヤァ。
でも空を見るのは好きで、
んでそれとは別に天気図を書ける、だけのことだ。
こんなに関わりがあるのに繋がない。
だって天気予報も気象の勉強も難しいんだよう。
だから、空をよめる人ってすごいなあと思う。
空、よめたらいいなあ。
野生の勘で。