奥宮参りの勧めもあった。
奥宮は、混同しないように船形麻賀多神社と呼ばれることが多いらしい。船形は町名だ。
掲示された地図には、車ルートと徒歩ルートの線がそれぞれ書き込まれており、
徒歩ルートは曲がり角ごとに案内看板があるとのことだった。
一応事前にルート検索していたが、
やや入り組んでいて辿り着けるか不安だったので、
案内表示があるならありがたい。
気楽に向かうことにした。
で、確かにちょっと迷いそうな辻に案内があり、
これがかなり助かった。
歩きながら眺めるのは、民家と田んぼの のどかな風景と、広い空。
田んぼは田植えが終わったばかりのようだ。
道端には青や紫の矢車草が連なるように群生していて、耳にはウグイスの鳴き声。
宗吾霊堂に向かっていた時から、ウグイスの声があちこちで大きく響いていて、
『梅に鶯』なんていうからウグイスは3月頃に鳴く鳥だろうと勝手に思っていたけどそうじゃないんだ、と知った。
むしろ繁殖期は4月〜8月らしい。長っ!
歩く道路に路側帯の白線はなかったが、
中央の線もないような、車通りの少ない道だったので、安心して歩いて行けた。
が、最後の迷いそうな箇所を過ぎた辺りの上り坂から、道の様子が微妙になった。
足元はコンクリートで舗装されているが、細くて落ち葉だらけでどうも小汚く、
え、ここ私道じゃないよね?という雰囲気に。
さらに、大通りを越えるのは分かっていたが、
渡るのではなく、くぐるようで、
短いトンネルなのに暗くてジメッとした空気に、
一瞬ひるんでしまった。
けれど他に道はないはず。これで合っているはず。
えいやとトンネルに入り、抜けた後も坂を上った。
坂を上り切ると、左側が駐車場になっていて、
正面のやや右寄りに鳥居が見えた。
鳥居からは参拝者の女性が出てきて、前の道路を渡ってこちらの駐車場に向かっている。
お〜よかった合ってた。着いたー。
と、鳥居に向かって行ったら、参拝を終えた女性に声を掛けられた。
「さっき向こうの神社にいらっしゃいませんでした?」
はい、いました。え?
改めて女性を見ると、どうもさっきの神社の子安神社か大権現社のところでお参り待ちをした時に会釈した人のようだった。
「私より先に神社を出られたのに、後から見えてビックリして。しかもあそこ(トンネル道)から来た人これまで見たことなかったから、そんな人いるんだってそれもビックリして。歩いて来られたんですか?」
その女性はよく車でお参りに来ているそうで、
この辺りは車がないと移動が不便だから、歩いて周る人はほとんどいないんじゃないか、と話した。
彼女にしたら、私は物好きなのかも。いや、他に移動手段がないだけなんですが。
しばらくその女性と話して分かったのは、
台方の麻賀多神社の拝殿は、劣化と耐震建築にするためとで割と最近建て替えられたことだ(しかも総檜造り)。
やっぱり新しかったんだ。
女性は両宮ともお参りするが、奥宮の方が好きだと言っていた。
この日も早朝からの仕事を終えて、車で40〜50分ほどのこちらへお参りに来たと言う。
それも相当距離があるが、もはや生活の一部なのかもしれない。
他にもいろいろ話をして、お別れした。
「ずっと歩いてきたの?この後も歩くの?よかったら駅まで車で送りましょうか?待ってますよ」
と言ってもらったが、
これからの参拝にどれだけ時間がかかるか分からず、早朝から仕事をしてきた女性の貴重な時間を取らせては申し訳ないのと、
どうやら女性の自宅は駅と反対方向のようなので、
お申し出に心から感謝しつつ、辞退した。
人からの親切って、栄養になるなあ。
さて、奥宮であるが、
その前にもう一つ神社がある。
伊都許利(いつこり)神社だ。
その昔、印旛国造(いんばのくにのみやつこ)に任じられた伊都許利命をお祀りした神社で、隣の小山は墳墓とのこと。
まず、景行天皇42年(112年)に、東征中の日本建尊(やまとたけるのみこと)が鏡を杉の幹に懸けて、「これ崇めるといいことあるよ」と置いてった。
そして応神天皇20年(289年)、伊都許利さんがここに、鏡をご神体として稚日靈女命(わかひるめのみこと)をお祀りし、
後に夢のお告げで地中から掘り出した勾玉を御神体とした稚産霊命(わくむすびのみこと。わかむすびとも和久産巣日神とも)を併せてお祀りしたのが、麻賀多神社の始まりだという。
そして後の推古天皇16年(608年)に、子孫が台方に社殿を造営して、稚産霊命を遷座したのが今の麻賀多神社で、
しかし船形の方もそのまま残って奥宮の扱いになっている、とのことだ。
歴史古過ぎてわけ分からん。すごいぞ日本。
伊都許利神社は、鳥居から延びる参道を行くと右手にお宮があり、その後ろに墳墓がある。というか、墳墓のふもとにお宮があると言える。
手を合わせて礼をして、参道をそのまま進むと、
もう一つ、やや左を向いた鳥居があり、右斜め方向に参道が延びているのが分かる。
ここが奥宮だ。
長くなったので、また続く