夏の風物詩の心霊番組ではなく、
元工業デザイナーの怪談話でもなく、
都市伝説系YouTuberの陰謀論や未来予知の話でもなく、
医学系番組を見るとおもしろくて怖くなる。
ふとチャンネルを回したら、
NHK総合で『総合診療医ドクターG』をやっていた。
前の放送の時から、患者の体調不良の原因を探っていく過程が謎解きのようでおもしろく、
シリーズ再開かあ と嬉しくて、番組は後半に入っていたがそのまま見続けた。
セットがかなり変わり、
以前は疾患名を探る研修医3人と、タレント3人が離れて座っていたのが、
今回は長机を合わせた両側にそれぞれ座って、
ドクターGはその前で、ホワイトボードを背に研修医の意見を聞いたりヒントを出したりする、
いわばカンファレンスをしている雰囲気のセット。
構えた感じがせず、こういうのもいい。
今回の患者は高齢で独居の男性。
主訴は体のだるさ。
この番組では、だるさとかめまいとか発熱とかの、よくある症状で始まり、
過去の病歴、直近の出来事や患者が感じた違和感、食生活などの暮らしぶり、表情やしぐさ、そしてバイタルサインなどを総合的に見て、
思わぬ着地点へと連れて行かれる。
今回の原因は、食生活由来によるビタミンB1不足から来る心不全(脚気心)だった。
見てると、なるほどな~と思うんだけど、
いざ自分が同じようになったら、
果たしてだるさで病院に行こうと思うだろうか。
でも、もし軽く見て、手遅れになったら。
そう思うと、怖くなってくるのだ。
自分の体内で起こってることが、自分では分からないんだから。
私は今元気だけど、
知りようのないことが実は今 体の中で起きているかもしれなくて、
明日も同じように元気でいられる確証はない。
医学系番組は、知識を得るおもしろさと同時に、
出された事例が明日は我が身かもしれないと思わされる怖さがある。
あと、これは医学系番組の括りに入るのか分からないが、
先日放送されたNHKスペシャル『法医学者たちの告白』は、
日本の法医学の実情の一端を見られたようでおもしろかった。
ドラマだと、法医学者は死に至った理由が細かに分かる、何でもお見通しな存在だけど、
実際にはそんなことはなく、警察の捜査に首を突っ込むこともあり得ないという。
裁判に証言者として関わることもあり、
それが国家権力と相対する場合、どのようなことが起こるのかといった話は、
何と言うか、薄ら寒さを覚え、ある意味怖かった。
ただ、ドクターGも法医学者も、
関わったすべてを解決できたわけではない。
ドクターGとして出演したある医師は、
原因を突き止められなかった事例も数多くある、と正直に話していた。
検死も然りだ。
生き物の体って、まず個体差があるし、状況によって代謝も一定じゃなくなるだろうし、
こんなに医学が進歩しても、まだまだ分からないことがたくさんあるのだろう。
だから医学系番組はおもしろい。
おもしろくて、分からないことがまた増えて、
後で怖くなるのだ。