綴ルンです

思ったことを綴っただけさ

現物のエネルギー

「原画展に付き合ってもらえないかな」

と誘ってきたのは、自らも絵を描く画人。

断る理由もないので、付き合うことにした。

 

真船一雄 漫画家40周年記念

 スーパードクターKシリーズ原画展 Kの系譜

 

スーパードクターK』って、35年くらい前に少年マガジンで読んでたよ。

筋肉隆々の強靭な肉体を持つ、凄腕の外科医の話。

えっ まだやってたの?

会場は、西武渋谷店モヴィーダ館の特設会場。

渋谷なんて通りすがるばっかりで、

用向きのために降りるなんて、何年ぶりだろか?

画人とは渋谷駅で待ち合わせ、会場に向かった。

が。

西武渋谷店自体は駅前からすぐ見つかるけど、

A館、B館、Loft館、Movida(モヴィーダ)館と分かれてて、

連絡通路はあれど、建物の位置関係で接続が斜め方向だったりして、

不慣れな者には大変分かりづらい。

画人とウロウロ、店内のスタッフに聞いたりしながら、やっこらたどり着いた。

 

会場に入ると、まず、

真船先生のあいさつ文、真船先生が実際に使われてる道具、描き下ろしのためのラフ画、そして年表。

この年表のエピソードが。

「草野球の最中に筋断裂を起こすもケンケンで盗塁する。休載せず」

「菓子パンの食べ過ぎで急性膵炎を起こし入院する。休載せず」

壮絶なんだか何やってんだか。人柄がしのばれる。

それからコミックスの表紙をズラリと並べたパネルに、主人公の一族の系図のパネル。

ここまでは写真撮影ができる。

原画展示ゾーンに入ると、撮影禁止。

マンガ原稿、カラー原画いろいろあったわけだが。

 

展示するにあたって選ばれた原稿は、見栄えのする劇的なシーンで人物が感情的になっているものが多かったせいか、

「どんなテンションで描いてるんだろう。くたびれないのかな」

などと、素朴な疑問が湧いてしまった。

で、そんなのばかりだからってこともなかろうが、

原稿からはきれいな迫力が漂ってきてたのだ。

原稿そのものが、本当にとてもきれいで、

修正は少なく最小限に留めていたり、切り貼りがなかったり、にじみ、かすれ、つぶれ、ダマなども一切ない。

そこに、思いのこもった線がクッキリと立つ。

美しいな〜。

カラー原画はさらに画業の職人魂も乗るから、

美しさがもっと迫ってくる。

プロの仕事ってこういうことなんだな。

 

画人とは、技術的なことをあれこれしゃべりながら見て、原画の見どころを教えてもらった。

画人は病み上がりで本調子にはまだ遠いのに、好きなものの現物を見られて本当に嬉しそうで、

渋谷駅で会った時より明らかに気力が戻っていた。

好きな気持ちを持って見てたことで、

原稿や原画から発せられていたエネルギーと共鳴したのかもしれない。

会場だって、基本的にファンしか来ないから、

愛でいっぱいだったんだろう。

ただそのファン、9割5分が女性。ほぼ女性。

ドクターKシリーズって、少年誌や青年誌の連載だったと思うけど、男性1人だけしかおらんかったな。

不思議。

あと、すごいと思ったのは、絵柄の変わらなさ。

ほとんどの漫画家さんは、連載中に絵が変わる。

主人公の顔立ちや顔つきが変わったり、線のタッチが変わったりする。

それが、真船先生は40年間変わらない。

これ、実はものすごいことだと勝手に思ってる。

 

展示会場を出ると、真船先生へのメッセージを付箋に書いて貼るボードがあったのだが、

そこにはボクシング漫画『はじめの一歩』の森川ジョージ先生直筆の付箋が。

おお〜、一歩(主人公)の顔をチャッと描いてる。

少年マガジン読者なら、大きなオマケまで見られたと喜びそうなもんだが、

画人は興味を示さなかった。知らないようだ。

聞くと、そもそもドクターKシリーズは少し前に電子マンガで大ブレイクしてファンを増やしたらしく、

それだと本誌のように同時掲載の他のマンガを読むことはない。

あー だから女性の観覧者が多かったのかな。

 

最後は物販コーナー。入口には完売品のお知らせ。

見ると、20種類近くの品が売り切れ。何と。

これも推し活なんだろか。

画人は事前に調べていたものをしっかり買えて、

気力がさらに満ちていた。よかったねえ。

 

私は今回付き合いで来て、特に真船先生やスーパードクターKシリーズのファンではないけれど、

それでも丁寧な仕事に宿るエネルギーに惹きつけられたし、

画人や他のお客さんを見てても、好きって大きなエネルギーになるんだなあと、

相乗効果も感じたすてきな原画展だった。

しかし、漫画の世界も昨今どんどんデジタル化が進んでて、

原稿がデータという漫画家さんだって少なくない。

展示会では真船先生が、最初のあいさつ文でアシスタントさんたちに、

「アナログな作り方につきあってくれたおかげで、原画展を開けました」とお礼を述べていたけど、

確かに原稿も原画も紙に描くから現物を出せる。

デジタル作品で、原画展ってできるのかな?

今後どうなっていくんだろう。

 

ところで渋谷って谷底のせいか寒くないすか?