日の丸弁当ではありません。
先日、国立科学博物館の特別展『和食 日本の自然、人々の知恵』を見に行ったので。
一緒に行った友人は、フランスの料理学校に通った経歴の持ち主で、発酵食品にも詳しい。
食に詳しい人と一緒だから、より知識を深められよう、とおしゃべりする気満々で、会場に入った。
会場は6章立て。
まず、和食とは何ぞや?から始まるため、世界各地の主要な食と比較。
このパネルがちょっと分かりづらくて、
地域ごと順番に紹介する映像の方がいいのに、と思った。
入ってすぐだから、映像だと人が溜まってしまうんだろうけど、
パネルの内容自体は丁寧に調べたんだなあという印象。写真も豊富だったし。
なので、もったいないと思ったのだ。
で、そこから日本の地理を掘り下げ。
地質、土壌、そこを通ることにより決まる水質、
地形と気候、そこからもたらされる植生。
植生により食材が決まる。
植物なら品種改良が進む。
キノコのレプリカや、山菜・野菜の植物標本がふんだんに展示されていた。
品種改良の1例として、様々な大根のレプリカも。20種以上あったんじゃないだろうか。ワサワサとした葉っぱは、微妙に形が異なるところまで再現。
それから、主食である米の説明、稲の成長度合いの展示。稲の根っこも初めて見た。
次に、周りを海に囲まれた島国ならではの海の幸、
魚と貝と海藻の展示。
魚のレプリカも多数で、特に各種マグロは大きさにビックリなのだが、
目を奪われたのは、海藻の標本の美しさ。
食べてはいても、植物としての全体の姿を知らなかった。ヒジキなんて繊細なのだ。
ナガコンブの標本は、壁を垂直にのぼり頭上に渡され、向こうの方まで吊られて展示。全長16m。よう吊ったな。
そして、海藻の色も思いのほかとりどりだった。
そして唐突に、発酵の説明へ。
日本酒、醤油、味噌の作り方と、使われる菌類が紹介される。
特に大事なのが、酵母とコウジカビ。
友人のお気に入りは、黄麹カビ。
しかし、展示の写真がかわいくないと文句を言っていた。科博を許してやって。
で、発酵により和食の調味料が作られ、カビの働きなくして鰹節はできないのだ。
これらを土台にして、いよいよ具体的な和食へ。
どこから始まるって、縄文時代ですよ。
それも、九州と東北の遺跡から、食べられてた物を比べるんですよ。
何と卑弥呼の食事を再現。調理は素朴ながら豪勢。
この食事の再現サンプルが、この後も時代ごとにたくさん出てくる。
個人的に、これらの再現サンプルが大きな見どころだった。とにかく数が多いし、忠実に再現するための監修もつくから、1皿仕上げるのもどれだけ大変だっただろう。
会場に1人きりだったら、それこそ舐め回すように長いこと眺めていただろうな。
時代が進んで、100万人都市江戸の町。
そば、すし、天ぷらの屋台が並び、撮影スポットとなっている。
ここでタコ人間に遭遇。タコで人間。
本当です。本筋とは無関係ですが。
会場内は展示品の写真撮影OK(映像など✕、動画撮影✕)、でも私は何も撮影してなかったが、唯一写真を撮ったのがタコ人間。ツボった。タコだけに。
江戸期のレシピ本も展示。有名な豆腐百珍とか。
レシピ再現料理のサンプルもあり、あとレシピ自体もQRコードで読み込んで、自分でも作れるようにしている。友人は早速読み込み。
至れり尽くせりである。
そして開国。
ハリスをもてなした料理の所で、説明板に「日米修好通商条約」の文言が出てきて、
あれ、ペリーが最初だよね、最初の条約何だっけ?
と友人と唸り、お互い思い出せなかったのでまあいいかと流して進もうとしたら、後ろから
「日米和親条約です」
と、若いお兄さんが教えてくれた。ありがとう。
会場全体が、何だかそういう打ち解けた雰囲気だった気がする。
食を前にして、ついあれこれ話したくなる、そんな感じ。人のおしゃべりもおもしろかった。
さて明治天皇の頃の晩餐にフレンチが登場し、
庶民には中華料理が広まった。
漫画『サザエさん』を題材に、戦後から昭和後期までの間、庶民の食に洋と中が加わる様子をたどっていた。
使われる調理器具も、ずいぶん様変わりしたのが分かる。
あと、全国お雑煮マップもおもしろかった。
地域によってどう違うのか、一目瞭然。
まだ展示は続くし、第2会場もあったが、
印象が強くて興味深かったのは、この辺まで。
会期は2024年2月25日までなので、
盛りだくさんの内容を詳しく知りたい食いしん坊は
行かれてみるのもよいのではないだろうか。
今回一番衝撃だったこと。
一汁三菜の三菜に、漬物は入らないという事実。
ご飯と、お味噌汁と、肉か魚の主菜、野菜を使った副菜が2つ、漬物。
おかずのお皿4枚じゃん。えーー!
漬物を副菜の1つにしてたよ、じゃあこれまで三菜だと思ってたのは、二菜だったのか!
そんなんムリだって、漬物常備してないって、たまに買うキムチで一菜にさせてよー。
塩っ気強いの苦手なんだよー。
これ、和食の崩壊の萌芽?