精米したての米はぬくい。
先日、知り合いのお米農家さんから、お米をいただいた。
新米の時期だからだ。
と書くと、「新米が手に入るツテがあるなんていいな〜」と思われそうだが、ちと違う。
農家さんとしては、収穫した新米を保管庫に入れるため、今ある昨年産のお米を出して場所を作らなければならない。
しかし自分たちだけでは食べ切れない。
近所も似たような状況だ。そこで、
「お店で新米が出始めたけどさ、去年のお米でよければもらってよ」
というわけで、いただいたのはなりたてほやほやの古米である。
いやあ、ありがてえっす!
私は新物初物バンザイ主義ではないので、
食べられるならもう十分。
品薄が続いてたお米が店頭に戻っても、
価格の高さにため息ついてたところだった。
そこに来てそのお声がけ、ハイ喜んでー!
それをいそいそと精米してきての冒頭だ。
今日の天気が1日くもりで涼しく、風も吹いていたからだろうか、
精米機から出てきたお米が入った袋を抱えた時、
動物でも抱っこしたかのような温かさで、
前に精米した時はこんなにぬくかったっけ?と
ちょっとビックリしたのだ。
このまま置いといたら、せっかくのお米が熱で傷んでしまう。
なので、帰ってから袋の口を目一杯広げて、
中に手を突っ込んで混ぜっ返すこと30分。
最初に手を突っ込んだ際も、
砂風呂ならぬ米風呂みたいだと思ったほど、かなり温かった。
30分混ぜ返して、ようやく冷めてきたくらいだ。
袋が紙袋なら、かすかな水蒸気も熱も吸ってしまっただろうが、
私はビニール袋に入れてたから、それが期待できなくて。
でも、いただけたお米をおいしく食べたいなら、
この程度の手間ひまくらいはかけなくちゃね。
折も折、前日、江戸料理についての講座を聴いてきたのだが、
「ご飯をいかにおいしくたくさん食べるかに腐心したのが江戸料理」という内容だった。
講座は神田明神主催の『明神塾』というもので、
ちなみに前回は江戸の日本酒についてだった。
さて江戸時代の料理は、9割がそのまま今の和惣菜となっている。
変わったのはお米の消費量だ。
江戸時代は成人男性で1日5合のお米を食べて、
とにかく体を動かして働いていたとのこと。
飛脚なんて毎日マラソンだもんねえ。
と、思い出したのはカーボローディング。
炭水化物を多く含む食事を摂ることで、筋肉や肝臓にグリコーゲンを蓄えて、長時間の運動でもエネルギーを確保できるようにしておく方法だ。
それを実地でやってたんだな。
そのお米を食べるための人気のおかずや、
上方の料理と味付けが異なる理由、江戸時代の料理本についてなどの講義だった。
講師の江戸料理研究家うすいはなこ氏のお話は、
元 博物館の学芸員との来歴からか、論理と実例が明快で、ユーモアもあり、とても分かりやすい上に、
早口だけど滑舌がよく聞き取りやすい声質なので、
とにかくおもしろくてためになった。
それに試食もおいしかった。
八分搗きご飯、ひたし豆2種、こんにゃくの南蛮風(油炒め)、出汁なし味噌汁。出汁の代わりに叩いた納豆が入ってて、具は豆腐と小松菜。
何だかきれいな物をいただいたな、て感じ。
少ない調味料で、素朴だけど滋味深く、体にもよい
という意味で。
「パンもおいしいんですけど、お米をもっと食べてほしいです」とうすい氏。
ああ某パンの点数シール集めに奔走している身には耳が痛い あいたたた。
そういえば、講座の主催である神田明神の御祭神、大己貴命(大国主命)のお使いはネズミだわ。
俵のお米じゃないけど、手元にお米もやって来たことだし、
おかずに青菜のごま味噌和えでも作って、
しっかりお米を食べますか。