帰りの電車に乗っていた時のこと。
夕方の帰宅ラッシュで混雑していて、
私はたまたま優先席の前に立っていた。
電車が大きく揺れた時、
後ろでドタッと大きな音がした。
「大丈夫ですか!」と男の人の声。
「立てますか?」と側の女性。
誰かが倒れてしまったまま、立ち上がれないらしい。
声をかけた女性が、自分の荷物を棚に置き、倒れた人を抱えるようにして体を起こし始めた。
倒れた人は女性だった。手に杖を握っている。
ショルダーバッグにヘルプマークを付けていた。
倒れた人は足に力が入らないようで、なかなか立ち上がることができない。
女性1人では、揺れる車内で起こしきれない。
最初に声をかけた男性が加わって、どうにか倒れた人を立たせることができた。
しかし、自力では立てない様子。
すぐ隣は優先席だ。
「すみません、席を譲ってもらえませんか」
と、男性が優先席の端で寝ている人に声をかけると、その隣に座っていた人が立ち上がり、寝ていた人も一旦起きて席をずれ、端を空けた。
すぐに座れるかと思っていたら、倒れた人はまだ足に力が入らないようで自力で移動ができず、女性が抱えたまま移動して座らせようとするも体勢が取れない。
「すみません、失礼します」と男性が代わって、ようやく倒れた人を座らせることができた。
しばらくは、女性がその人の前に立って少し話をしていて、
男性は私の隣に立ち、背後の2人の様子を気にしている感じだった。
女性が自分の降りる駅に着いた時、倒れた人はまだ先まで乗っているようで、
男性が女性と話をして、今度は男性が倒れた人の様子をみるということになり、
お願いしますと言って女性は降りていった。
私もまもなく電車を降りたので、
その後どういう流れになったかまでは分からないけど、
まったく見ず知らずの人たち同士による
親身な思いやりの連携の場面に居合わせて、
こちらまで温かな気持ちになった。
直接関わった男性と女性はもとより、
席を譲った人も。
夕方の電車なんて、ほぼほぼ全員クタクタだ。
席が空いてたら座りたい。
優先席でも座りたい。
立っていたら目の前の席が空かないかなと思うし、
疲れてたらついイライラしがち。
混雑してたらなおさらだ。
人には皆それぞれ事情もあるし。
だからこそ、わずかでも心にゆとりを持てるような自分でいたい。
明らかに自分より困った人がいたら、
迷わず手助けできるように。
そんなことを感じた出来事だった。
あの男性と女性と席を譲った人に、
良いことがありますように。
何だか私まで助けられたような気持ちになりました。
どうもありがとう。