「狭いニッポンそんなに急いでどこへ行く」
という標語があった。
交通事故の件数が社会問題になってたから、
気持ちにゆとりを持とうという意味合いだと、
子どもながらに何となく理解していた。
日本は確かに他国と比べて国土面積が大きくない。
社会科の副教材の地図帳で世界地図を見ると、
日本ってこんなに小さいんだと思った。
もっとも、その世界地図はたいがいメルカトル図法で描かれていて、
丸い地球を平たくして緯度と経度を直角に交わらせる分、南北の両極に近づくほど国土面積が広がるような描かれ方だから、
日本がよけいに小さく見えてしまうのだが。
国土面積が正しい地図はモルワイデ図法で、地図全体の形が楕円形。
しかし、地図の両端に行くほど国の形が細長くなるので、国の形が見づらい。
そしてそれでも、日本は小さい。
だけど大人になってくると、
日本だって十分広いわ、と感じるようになった。
移動手段が発達して、移動時間は格段に短くなってるのに、
ああ、遠いなあ・・・と思うことが増えた。
なぜだろう?
移動中の景色の密度が高いせいなのか、
気ぜわしくなったのか、
老化現象か。
だいたい、時代物ドラマもよくない。
鎌倉から岩手の平泉まで、移動が一瞬だったり、
鎌倉と京都の間も一瞬だったり、
青森からやって来てあっという間に鎌倉を陥落させて、またあっという間に岐阜まで行っちゃったり、
大阪から朝鮮半島とか、堺からフィリピンとか、
それ本当はどのくらい日数掛かってるんだよ、というところをはしょり過ぎ。
その感覚で移動しようとすると(しようとするのもおかしいのだが)、遅々として進まず あれー?となってしまう。
まして足軽は徒歩でしょ?
戦でなくても、江戸からお伊勢参りとか、大山参りとか、飛脚とか、駕籠とか、
昔の人、すごいなあ。
国内で行きたい所、まだたくさんある。
なのに移動の時間と手段と費用を思うと、
計画も立てられない。
ニッポンのどこが狭いんだ。
隣県に行くだけでも時間と手間が掛かるから
(県境に住んでないもんで)
急いで行っておきたいんだ。