最寄り駅の改札口を出ると、目の前に小さなスーパーがある。
今日は帰りが少し遅くなったので、
お惣菜かお弁当か、ほか何か安い食材があったら買おうと思って寄っていった。
店内をあらかた吟味して、
こんなものかとレジに並び、
会計の時に細かいお金がなかったから、
少し大きい額の紙幣を出した。
お釣りの千円札を受け取った時、
妙にスカスカした色合いだなと感じてよく見ると、
漱石さんがこちらを見ていた。
ああ、漱石さんか。
えっ 漱石さん?
もうすぐ新たな絵柄の新紙幣が発行されるというのに、
今 漱石さんに会うとは思いもしなかった。
英世になって何年だろう。
英世、あんまり馴染みがないよな、千円札つったら漱石だよな、と思っていたのに、
目はすっかり英世紙幣に慣れていたのだ。
そして、お店のレジから出てきたということは、
近々に漱石紙幣を使った人がいるということで、
私はレジの仕組みがよく分からないけど、
今日の今日、使われた可能性が大きくないか。
当たり前と言われそうだけど、
旧紙幣、使えるんだね。
博文もいけるかな?
聖徳太子の五千円札は?
諭吉の裏面がキジのやつは余裕かな。
新紙幣にすることで、
古いデザインのタンス預金を吐き出させる狙いもあると聞く。
お金を世にも出して経済回すのも大事。
然れども、それ以上に生活の防衛のために貯めておきたいものだ。
この急な物価高では、貯めたところでお金の価値は目減りしているだろうけど、
それでも持っていると安心できるものなんだ。
久しぶりに手にした漱石紙幣は、
シワシワだけどクタっておらず、
全体に張りがあった。
使った人は、どんな理由でこれを引っ張り出したんだろう。
え、まさか偽札じゃないよね?