綴ルンです

思ったことを綴っただけさ

炎天下の成田山詣り 参道編

成田駅から成田山新勝寺に続く表参道は、

全体的に蛇行していて、

途中から坂を下る道になる。

下った所に総門があるので、

つまり帰りは上り坂である。

そこに、上からは容赦ない日差し、

下からはその輻射熱に加えて地面に溜め込まれた熱気、

歩けないほどではないけど痛くて困った足。

これはおみやげ修行ですか?

行きの時には並ぶお店を何となく眺め、

帰りにちょっと寄って見ようかな〜なんて楽しみにしてたのが、

もはやそんな余裕はどこにもない。

一歩一歩、ひたすら坂を上るしかなかった。

 

時間的に、飲食店はランチ営業が終わって夜の仕込みに入る頃だったが、

あまり関係なくやってるのかなというお店もあれば、

うなぎを捌く石の台をジャバジャバガシガシと洗っているお店もあって、

そこはうなぎを焼く炭火の始末もしているよう、

入口の張り紙には

「本日酷暑のため午後3時で営業を終了いたします」

今日はうなぎ屋が閉まるほどの暑さなのか。

 

寄ろうと思っていたお店に寄る体力も気力もなく、

ただただ坂を上る。

途中の成田観光館は、和風の大きな入口で、

ここも帰りに入ってみようと思っていた所だったが、

外国人観光客のグループが入口前でどっしりと休んでおり、

間を縫って入っていくのも面倒くさく感じて、

結局通り過ぎた。

 

坂を上った所の右手に

お寺らしき建物があった。

お地蔵様が並んでいる。

のぞいてみると、

成田山 薬師堂

・・・こ、ここもかっ!

くうっ、これはお参りせねばなるまい。

入って数段の階段を上がると、左に手水舎。

お水が出てないな、と少し近付くと、

途端にピューと水が出てちょっとびっくり。

センサー式で合理的。

薬師堂だから、薬師如来がご本尊だよね。

けど、新勝寺の境内には新しく醫王殿が建てられて、そちらにも薬師如来がいらしたから、

こちらのお堂は何だろう?

で案内板を読むと、成田山では現存最古のお堂だという。

本当はもっといろいろ書かれていたが、暑さに頭がやられてちっとも理解できなかったので、帰ってから調べると、

かつてこの薬師堂は成田山本堂だったとのこと。

それで成田山薬師堂か。

本堂として使われたのは50年ほど。

参詣者が増えてきて手狭になったから、移築したのだそうだ。

あれ、釈迦堂も元々は本堂じゃなかった?

とさらに調べると、

現薬師堂の次に本堂として建てられたのが現在の光明堂、

それから160年くらいして、本堂として建てられたのが現在の釈迦堂、

その110年後に建てられたのが大本堂。

大本堂は建って半世紀を過ぎたくらい、比較的新しい建物であった。知らなんだ。

そして、それまで使われた本堂をただ取り壊すのではなく、

移築して新たなお役目を担い、共にお山を盛り上げ参詣者を受け入れる。

維持管理が大変だろうけど、文化財としても価値があるし、良いですなあ。

 

さて、暑さと痛みにふらつく足で参道を駅へ進むと、右に白壁の大きなお店。

成田といえばなごみの米屋。

お米屋さんではなく、お菓子屋さんである。よねやと読む。

羊羹から始まったこちらの總本店は、

裏手に誰でも入れるお不動様旧跡庭園と、

入場無料の成田羊羹資料館と、

工場がある。

羊羹資料館で少しは座れるだろうか、涼しくはあるよねたぶん、とさほど期待もせずドアを開けると、

熱中症寸前の私には救世主的な所だった。

 

入場無料なのに、スタッフ1名いるだけで、

まるで貸切状態。

奥に米屋歴史ムービーを流しているコーナーがあったので、

並んだベンチにドカッと腰を下ろした。

エアコンの風がやさしく当たり、火照った体をゆっくり冷やしてくれる。

飲食禁止だけど、お水だけ飲ませてくださいごめんなさい。

ああこのまま歴史ムービー5巡くらい見てたいわ。

しかしさすがにそれは怪しまれるので、

ある程度回復したところで、館内の資料を見て回った。

体温は落ち着いたが、足の痛みはどうしようもない。

裏にマメができかけた痛みだったので、これ以上擦れないように慎重に歩くしかなかった。

 

資料館の内容は、ごくザックリとしか書けない。

なぜなら、所々しか覚えてないからだ。

成田街道の写真は企画展だったかな?

戦前に使われていたような調度品があったり、

2階には日本各地の名物羊羹あれこれとか、

米屋の宣伝に出てらした岩下志麻氏の凛とした美しさとか、

昔の製造工場で実際に使われていた道具類とか。

中でも、紹介されている創業者の諸岡長蔵という方は大変な人格者のようで、

『米屋羊羹店の信條』と『長蔵語録』が2枚セットで置いてあり、自由に持ち帰ることができるのだが、

至極真っ当だけどつい忘れがちになることを説いている。

何とかモーターの上役の人達とかまつりごとに携わる人達に刻みたいくらいだ。

自分も気を付けよ。

あと、入口の隣に羊羹おみくじなる物があり(おみくじ羊羹だったかな)、恵比寿様と大黒様の2種類があった。各100円。

建物自体もいくぶんレトロな雰囲気で、好きな人にはたまらないだろう。

 

お不動様旧跡庭園は、羊羹資料館よりも奥にある。

よく手入れされた小ぢんまりとしたお庭の中央奥に、平成水守り不動尊

最奥に、不動の大井戸、

手前には創業者の胸像。

井戸からは竹筒が出ており、チョロチョロと水が落ちている。

頂けるらしい。ありがたい!

さっき資料館で持ってたお水飲み干しちゃったんだよね。

無論タダっていうのは恐れ多い。

だってすぐ横でお不動様が見てるし。

そこで、お不動様にお参りしてお賽銭をお水代とさせてもらい、

井戸の水を手持ちのボトルに分けていただいた。

ふと顔を上げると、

真横の工場で働く方々の姿が。

中、丸見えじゃん。

てことはあっちから私も丸見えじゃん。見てないだろうけど。

製造現場を見たいような、でも見ている自分を見られるのは恥ずかしいような、複雑な心持ちで庭園を後にした。

 

なごみの米屋を出ると、

成田駅まで近道

と書かれた札があり、右に小道が延びている。

般若小路という通りで、観光地化した表参道に比べて生活道路という感じ。

くねった道を下って上って、ほどなく駅前に着いた。

 

これにて、炎天下の成田山詣り 終了。

ひたすら暑くて長い一日だったが、

どうにか無事にお参りできて良かった。

 

一番お礼を言いたい相手は

・・・成田羊羹資料館。

行き倒れなかったのはあなたのおかげです。

今度は展示をちゃんと拝見いたします。