待乳山聖天のお供え物は大根だ。
お供えされた大量の大根は、
『御供物』の食紅スタンプを押されて本堂の前の小屋の台に積まれるので(字が潰れて赤い点が縦に3つ並んだだけに見える)、
参拝者はそれをお下がりとして持って帰ることができる。
脇の『志納』と書かれた細長い箱に、志で好きな額を納められるが、
納めずにタダで持って帰っても咎められない。
しかも手提げのポリ袋もあってありがたい。
並ぶ大根をどれどれと吟味。
白くぽってりとしたフォルムが並ぶ中、
一番上の真ん中に積まれた大根は、他より少し細長く、皮にキズも付いて全体的にうっすら茶色がかり、葉っぱも他よりやや伸びていて、異質な雰囲気を放っていた。
それ以外の大根を、と他を見比べるのだが、
件の大根がものすごい存在感を示し、
「持ってけ〜 我を持っていけ~ さあさあさあ」
と訴え出したので、どうにも無視できなくなり、
ついに根負け。
大根と根比べするもんじゃないわね。
「分かりました。うちにおいでませ。」
と、手提げポリ袋に大根を収めるが、長くて頭の先と葉っぱがはみ出す。
これを持って帰るのか。
そういえば。
私は普段、容量のあるショルダーバッグを使っているのだが、
家を出るほぼ直前、もっと大きなリュックにしようとふと思い、急いで中身を入れ替えたのだった。
もしや、これかあ。
大根をリュックに入れても収まり切らず、なお葉っぱがのぞいていた。
ショルダーバッグじゃ持って帰る気になれなかっただろうな。リュックにして良かった。
あと、大根のお供え物について注意があった。
これは境内のどこで読んだか忘れたが(売店付近かな)、
『お供えの大根に願い事を書くのは止めてください』という内容。
お供えされた大根は、御供物の印を押した後お下がりとして希望する参拝の皆様に渡されるが、お願い事を書かれるとそれができなくなってしまうから、と。
個人の願い事が書かれた大根なんて、誰もいらないもんね。誰が始めたんだか。
たぶん、想像力がなくて自分のことしか頭にないどっかのバカがしたんだろう。
もしそれを得意気にSNSに上げたんだとしたら、それ見て「いいね!」と思った同じようなバカが続いたのかもしれない。
絵馬じゃないんだよ。
どうしても叶えてほしいお願い事があったら、ご祈祷を申し込めばいいでしょ。
ルールに則ったルートでお願いしてください。
さて大根をリュックにしまって、本堂前の階段を下りようとしたら、
寺院の法被を来た人が、階段の下で参拝者を誘導していた。
階段は中央に手すりがあって、左右に分けられているが、別に上り下りの決まりはない。
が、法被の人は片側を通らないようにさせている。
すると、下の方で太鼓が鳴った。
今日は特に行事の予定はなかったはずだけど、何か始まるのか?
通れる側の階段を下りて、音のした方を見ると、
階段の下の社務所からお坊さんが4人出てきて、入口の両脇に2人ずつ向かい合わせで並んだ。
ちょっと寒そうにしてる。
しばらくして、いかにも偉い位のようなお坊さんが現れた。
この辺りから、全体的になぜかうろ覚えだ。
あんまりまじまじ見るのが憚られたし、基本頭を垂れて拝む格好だったので。というのも、周りの人がみんなその姿勢だったから、倣わないと不遜のように思えてさ。
偉いお坊さんは、紫の法衣だった気がする。
他にも半袈裟(首にかける帯状の袈裟で、両端に紐が下がっている)の人が現れていて、列になったお坊さんたちの先頭に立ち、本堂まで誘導。法被の人が後に続く。
お坊さんたちが階段を上ったので、片側封鎖解除。
下りた階段をまた上った。
だって、絶対何かやるじゃん。
大根の説明で長くなっちゃったので、続く