綴ルンです

思ったことを綴っただけさ

もやしてかもして

先日訪れたのは、

東京農業大学「食と農」の博物館。

醸造科学科展『JOZOOー醸造と発酵のせかいー』

という企画展示がおもしろそうで、

加えてこの博物館は、常設展は元より企画展でも入場無料なので、

日本ご飯 - 綴ルンです

の時の友人を誘って一緒に行った。

なお会期は4月6日までなので、ブログを書いてる今の時点で終了している。

訪れたのが最終日だったから、当日書いたって終わってたわけだが。

桜の町 桜の宮 - 綴ルンです

に書いた別件とはこのことで、

こちらの方がメインである。文章化は遅くなったけど。

 

「食と農」の博物館は、東京農業大学のキャンパスと馬事公苑の間にある。

巨大なニワトリの像が目印だ。

博物館の建物は、建築家 隈研吾氏のデザインで、

そういや中に隈氏に関するコーナーもあった。

とりあえず入ると、受付の隣にナギナタナマズの生態展示。体が大きいから水槽が狭そう。

 

さて、企画展である。

入ると、木桶から日本酒が発酵しているプチプチブツブツという音が聞こえる展示。

合成ではなく、実際に録音したものだ。

隣の三面スクリーンでは、酒造会社の協力を得て日本酒造りの全工程を映す。

別のところでは、パソコンのモニターとタブレットを連動させて、

麹菌、酵母、乳酸菌の電子顕微鏡画像いろいろが見られる。

これがちょっと、画像によっては、

本気の集合体にトリハダが。特に麹の胞子嚢。

他にソーセージみたいな納豆菌もあってほのぼのしたり、丸っこい酵母がかわいらしかったりもしたんだけど。

ちなみに大きさの違いだが、

麹菌はカビの仲間なので、肉眼で見える。

が、酵母と細菌は見えない。

画像では、麹菌の菌糸に酵母がコロコロとくっつき、酵母にチョロチョロと乳酸菌がまとわりついていた。菌、小っさ!分かっちゃいたが改めて。

麹といえば、今世間では事故を起こした紅麹が連日のニュースになっているね。

日本人は昔から、その麹と仲良くやってきた歴史も解説されていた。

もっと言うと、麹菌って日本独自のもので、

日本の国菌だ。国菌て何だよ知らなかったよ。

東〜東南アジアにしかいないようで、

自然界だと弱いから他のカビに負けて、繁殖しないらしい。へえ。

そんなのよく見付けて使い続けてきたなあ。

それから、国内世界問わずあらゆる発酵食品が並べられていた。

実物ばかりではなく、蝋細工で作られたものも。

しょうがないよ。パンは置いておけばかびてしまうし、世界一危険な缶詰であるスウェーデンシュールストレミングは、どうしたって実物の展示ができない。これ中身のレプリカ作るの大変だったろうな。涙と吐き気が止まらなさそう。

その意味では、くさやもレプリカだった。

発酵調味料の種類も、魚醤だけで何種類あったか。

チョコレートはカカオ豆を上手に発酵させなければ、質の良いチョコにならない。

コーヒー豆も然り。この辺りはまったく知らずに、普段その恩恵を受けている人が大多数だろう。

私の好きな沖縄の豆腐ようは、まさに話題の紅麹を使った食品。

生ハムだって発酵させて熟成を待つ食品。

あ、かつお節もか。

と、こうして書いてたらキリがない。

もう、あれもこれもそれも、みーんなまとめて、

発酵のおかげなのよー!

と、両手を広げてとびきりの笑顔で誰ともなしに言いたくなってしまう。

なお一緒に行った友人は、たまご焼きでも焼くかのように何でもなく手作りパンを焼く人なのだが、

生地を発酵させるのに、自分で酵母を起こしてそれを使う、私に言わせれば発酵を熟知した人で、

この展示でも各種情報の補足をしてくれた。ありがとう!

 

日本で発酵といえば、味噌、醤油、日本酒、納豆が代表格だろうが、

全体的に、麹と酵母と乳酸菌がフルキャストで活躍する日本酒造りに焦点を合わせていた内容だった。

だから、実際に使われていた酒造りの器具も展示。

触ることもできた。木製のかき混ぜ棒(櫂棒)の重いこと。なるほど腕力と体力で勝負の男仕事だね。

日本酒に使うのは黄麹

よく甘酒や手作り味噌を作るのに使う米麹は、蒸米に黄麹を生やしたものだ。

じゃあ、黄麹はどこから手に入れてるの?酒蔵ごとに育ててるの? というと、

種麹屋 という専門職がいるのだ。もやし屋 ともいう。種麹のことをもやしというから。

それは知らなかった。

けど考えてみたら、乳業メーカーがヨーグルトを製造する時も、種にする乳酸菌はその専門の会社から買ってるから、同じことか。

 

発酵と腐敗の違いは、微生物の作用が人にとって良いか悪いかである。

では、発酵と醸造の違いは?

展示によると、工程に米麹が絡むと醸造、とあった気がしたが、解説をメモりも写真撮りもしなかったから、心もとない。しまったな。

ので検索すると、発酵を応用したものが醸造だと。

微生物の働きで、糖からアルコールや炭酸ガスが生成されたり、乳酸菌なら乳酸が生成されたり、タンパク質や脂肪が分解されたりするのが発酵。

それを利用して、お酒や調味料や食品を作るのが醸造、とのこと。

なんだけど、パンや魚醤は醸造するとは言わない。

かもしてつくる が醸造なので、かもすで調べると

どうやら麹があっての「かもし」らしい。

だから、お酒や味噌や醤油が「醸造」なんだな。

日頃からずーっとお世話になってるし、楽しんでもいたのに、

全然分かっていないことだらけだった。

でもって、先人の知恵ってすごいなーと、

何度もうならされたのだった。

最後は、最新の研究にどのように生かされてるかの紹介。

眠くてあんまり覚えてない(←失礼)。すみません。

 

企画展示のフロアはそんなに広くはなかったのだが

情報量がみっちり詰まったおもしろい内容だった。

その後、この博物館の常設展を見てまわったのだが

それはまた後日。